必ずブランディング通になれる3分で読めるエッセイ〜ブランドのチカラ

ブランディング・コンサルタントの経験譚。Barで若きマーケーターとスコッチ飲んで話す気分で。ブランディング & マーケティング・コミュニケーションのあれやこれやを分かりやすく、自分の言葉で。

其の6 続 で、ブランドってなに? ブランドという象

f:id:brandseven8:20200605185807j:plain* ”Kapferer ( 2008 ) *1は、ブランドの専門家の間で最もホットな議論の1つがブランドとは何かについて見解が一致していないことであるといい、Avis ( 2009 )*2は、さまざまなブランド定義をレビューしたうえで、ブランドという言葉を定義することは、「群盲象を評す」という状況に近いと述べている。” *3

寅さんなら「それを言っちゃあ、おしまいよ。」と言うでしょうね。☺️

ブランド論の定義としてどうかは置いておき、それだけ多種多様な
見方があるということなんでしょう。群盲象を撫でたり評したりするという中で、ひとつ確かなのはそこに象はいるという事です。

今回は耳はどうか、鼻はどうか、あたまは・・・ブランド象のパーツについて撫でてみようと思います。

ブランドについて書かれているものを見ると、ブランドの構成要素はこれまた見方は百花斉放で実に多種多様です。
経営視点で語るのか、事業部単体視点で語るのかによって分析要素が変わるわけです。
象に例えるなら、象を動物園にいる動物の一種として見るのか、動物単体で見るのか。

まずは単体で象を見たいと思います。すなわち外見について。

<<ブランド要素とは…ブランドを構成するさまざまな最小単位のことです。ブランド要素の代表的なものとして、次の9つが挙げられます。ネーミング、色、ロゴマークロゴタイプ、ジングル・音楽、キャラクター、パッケージ、キャッチコピー、ドメイン ( URL )、匂い。*4>>

日本企業でブランドと言う時は、この見方をさしていることが多いと思います。
わかりやすく有名な海外の例で言うと・・・
Nikeロゴマークはスウォッシュ、キャッチコピーはJust Do It、キャラクター・色・ジングルは特筆すべきものはないですね。

コカコーラなら色は赤ですかね。BMWは青と白のエンブレムにキドニーグリル。BMWは元々飛行機のエンジンをつくっていたので、エンブレムはプロペラと青い空 & 白い雲をモチーフにした由。キャッチコピーはThe ultimate driving machineです。
遡って考えるとそれぞれの会社の製品に対するポリシーが覗き見れて面白いです。

Nikeのスウォッシュは勝利の女神ニケの翼をモチーフにして、躍動感を表現していることは有名な話です。創業者フィル・ナイトのスポーツ選手を徹底して応援するんだという姿勢が滲み出ていますね。

BMWについてはブランディングにまつわる面白い話を聞いたことがあります。写ルンですのような使い捨てカメラが全盛期の頃だったはずなので、1980年台後半から1990年代初頭くらいではなかったかと思います。メルセデス・ベンツBMWというドイツ車を代表する2ブランドについて調査会社がユニークな調査をしました。

それぞれの車のオーナー達に使い捨てカメラを渡して1週間にわたって自由に愛車の写真を撮り切って貰う。車の一部さえ写っていれば良い、あとは自由ということで。回収後調査会社が写真を分析したところ、実に示唆に富む写真が上がってきたそうです。

BMWのオーナーは写真の中に自分はほとんど写っていなくて、BMWロゴのあるハンドルやメーターパネル、アルミホイールタイヤのアップ、峠や高速道路のパーキングに停めた車体など、つまりマシーンとしてのBMWを愛でるように撮っていたそうです。対照的にメルセデス・ベンツのオーナーは車単体ではなく、自分を含めた家族と一緒であったり、自分の家を背景にしたり、つまり生活環境がわかるような撮り方をしていた。

それぞれのブランドの持つ特徴が明らかに出ていますね。BMWのオーナーは the ultimate driving machinそのものを愛している「走り屋」。一方でメルセデス・ベンツのオーナーは、以前のブログでご紹介したツェッチェ氏*5の言うところの「成功者」の自分のステイタスを車に被せている。実に面白い。あ、これ何かのドラマの主人公の決め台詞でしたね。😁

Nikeのスウォッシュを見て人は「躍動感」を感じるでしょうし、Coca Colaのロゴとテーマカラーの赤を見て「爽快感」を感じる筈ですが、勝手に皆が感じるわけではなくてブランディングが長きにわたってそう設計され、目指してきたからです。
ロゴマークは其のブランディングの可視的な外見です。成功したブランドでは、これを見て人は設計、合意・納得された方向にイメージを膨らませていくわけです。

さて、単体の像ではなくて動物園視点から見る象の捉え方、これは経営視点でのブランドマネジメントになるかと思います。

経営戦略レベルでのブランド戦略では...次の6つを検討・決定する。*6

  • ブランド・テリトリー : どの市場にブランドを構築するか。
  • ブランド戦略アウトライン策定 : どのようなブランド戦略を展開するか。
  • ブランド・アーキテクチャーの決定:その企業のブランド体系のどこに位置付けるか。
  • 知財戦略の決定:どの商標を知的財産としてどのように登録し、権利として維持確保するか。

なるほどです。私の最大の関心事はブランドの核をなすものなので、ここは「なるほど」で終わらせておきます。😁



ブランドという象は「像」なのだと思います。多くの外的刺激を受けて人々の頭の中に出来上がった「像」。
ブランドには送り出す側、つまり会社側の意図したブランドと、人々の脳内に結晶したブランドの二つがあり、
双方のベクトルが一致したとき、ブランディングが上手く像を結ぶと言えるのではないでしょうか。
そしてこの像がブランドの核だと思うんです。

続きは次回に。

*1:Joel-Noel Kapferer. ジョン・ノエル・カプフェレ。著名なブランド論学者

*2:ニュージーランドのブランド論学者

*3:田中洋著 ブランド戦略論 有斐閣

*4:社員をホンキにさせるブランド構築法 一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 同文館出版

*5:ディーター・ツェッチェ 1996〜2019 独ダイムラー社CEO

*6:田中洋著 ブランド戦略論 有斐閣