必ずブランディング通になれる3分で読めるエッセイ〜ブランドのチカラ

ブランディング・コンサルタントの経験譚。Barで若きマーケーターとスコッチ飲んで話す気分で。ブランディング & マーケティング・コミュニケーションのあれやこれやを分かりやすく、自分の言葉で。

其の19 日本発のグローバル・ブランド、ゴジラについて考えてみた

前回、富士山は日本最長で最大のブランドである、と書きました。
グローバルに通用しているブランドでもあるかと思います。
今回は富士山に並び*1世界に知られるゴジラGodzillaについてブランド視点で考えてみたいと思います。

東宝が制作配給した映画「ゴジラ」が登場したのは1954年です。
ゴジラ第1作のことなど今の人は知らないでしょうから*2、ちょっと概略を書きますね。

"小笠原付近で貨物船がSOS信号を発信後消息を経ってしまう。捜索に向かった船までもが姿を消す事態に。これは度重なる水爆実験により棲家の深海洞窟に潜んでいた200万年前のジュラ紀から生息する呉爾羅(ゴジラ)と地元の人々が呼んで怖れていた怪物の仕業であると断定された。そしてゴジラ東京湾に姿を現し、品川から上陸すると第一京浜国道を上り銀座を攻撃、国会議事堂までも破壊する。銀座四丁目和光前や国会議事堂前で咆哮するゴジラの姿は往年のファンには有名なシーンである。自衛隊のF戦闘機に追撃されてゴジラは再び海に戻っていく..."

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ゴジラ第1作東宝の宣材セット復刻版より

実はゴジラ第1作の封切られた1954年にアメリカは太平洋のビキニ環礁で大規模な水爆実験を行なって、それを知らずに付近を通過していた日本の第五福竜丸被爆してしまうという悲惨な事件がありました。

ゴジラはこうした社会背景の中で製作された、人々の水爆への恐怖が通低音として隠されている問題提起的な映画だったわけですね。時代です。*3



で、このゴジラは空前の大ヒット作品となりました。
ヒットしたら続編を作るというのが鉄板の映画界ですから、
東宝は続々とゴジラシリーズを制作していきます。
1954年のデビュー以来、2016年の「シン・ゴジラ」まで実に29作品、アニメ版3作品ができました。加えてハリウッド版が4作品。これ本当に凄いことです。

有名なハリウッドにあるエンターテイメント界で活躍した人々の名前が彫られたウォークオブフェーム、2000人以上あるそうですが、ここには3人の日本人俳優の名前があります。

早川雪舟さん。戦後のハリウッド映画界で大活躍しました。そしてマコ岩松さん*4。最後はご存知三船敏郎さん。ケン・ワタナベもまだプレートは出来ていません。

そしてこの三人に加わったもう「一匹」がGodzillaです。2004年末に認定されました。
マコ岩松さんはアメリカ国籍ですから、日本人二人と日本生息怪獣一匹というのが正確かな。😁

さて、少し気になって、世界のロングランの映画シリーズを調べてみました。

007シリーズ    24作品
スターウォーズ    9作品 (アンソロジー2作品)
ハリーポッター    8作品 (ファンタスティック・ビースト2作品)
等々。

007シリーズの24本*5ゴジラの合計36本には及びません。

これを遥かに凌ぐシリーズには松竹の「男はつらいよ」シリーズで、
なんと全50作! でも寅さんは残念ながらグローバル・ブランドではないですね。ドメスティック・ブランドとしては確実に富士山に並びます!

さて、本題に移ります。*6ゴジラがブランドなら、ブランド価値は何か?これを考えてみたいと思います。

昨年2019年3月、日本柔道連盟が東宝とタイアップして柔道日本代表団を「ゴジラジャパン」と呼称するプロモーションを発表しました。
ブランディングというのは、正しいベクトルにあるならラインエクステンションをしてもハローイフェクトが期待できます。

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sponichi.com

日本柔道の場合はゴジラの圧倒的な「強さ」を表現したかったんだと思います。記者会見でも全日本男子監督の井上康生氏が「格闘技の世界で強さを求めるなかで、強い助っ人を頂いた。」と言っています。

とても良いアイディアだとゴジラファンの私は好感していたんですが、
女子代表には不評だったようですね。ともあれこのタイアップは半年後に年内限りで終了との発表があり、短命に終わってしまいました。

さて、ゴジラのブランド価値って「強さ」なんでしょうか? 強さなら、キングコングとの違いはなんでしょうか。

私の見立ては、ゴジラのブランド価値=情緒価値は「再生」なんです。
何度も何度も自衛隊の火器攻撃を受け、他の怪獣と厳しい戦いを勝ち抜き傷だらけとなってゴジラはまた海に戻っていきます。そして作品と作品の合間に傷を癒して、あの伊福部 昭氏作曲の有名なBGMと共に咆哮して再びリングに上がるプロレスラーのように再上陸するのです。
キングコングは最後には死んじゃいますよね。ゴジラは何度も再生し、再上陸するんです。素晴らしい再生力です。自衛隊に倍返しだ!😁

これは壮大な「再生」劇だと私は思います。柔道選手も全身創痍、度重なる怪我を克服し、試合の場に立つということかと。だから私は余計に
ゴジラジャパン」プロモーションの発表に快哉を叫んだんですけど。
女子選手には人気がないんですねぇ。

「再生」のベクトルにあるものなら、ゴジラ・ブランドのハローイフェクトは活かせると思うんです。米国のGeneral Motorsとか。GMが強かったのは昔過ぎるからダメか。😁



さて、そろそろ筆を置きますが*7、最後に皆さんに質問です。東宝ってなんの略か知ってますか? 聞いてみると、実は知らない人が結構いるんです。宝塚ファンで知らない人はいないでしょうけど。そうなんです、東宝って東京宝塚の略なんです。あの華美な宝塚劇団の経営母体が、究極にある怪獣のゴジラをつくったというのが面白いですね。エンタメは美から怪まで裾野が広いということでしょうか。裾野が広い、富士山と同じですね。😁

*1:高さは標高3776メートルの富士山にはシンゴジラ時で身長118.5メートルのゴジラでは並ぶべくもないですが😃

*2:私もまだ生まれてないですが。😁

*3:昭和30年代〜40年代の頃の映画を見るとかなりチャレンジング なものが沢山ありました。タブーに忖度していない。これはまた別な機会に考察してみたいと思います。

*4:1993-2006。日系アメリカ人俳優。多くの映画に出演し、アメリカではブルース・リージャッキー・チェン並みに知られた顔と言っても過言ではありません。

*5:ダニエル・クレイグマン主演の最新作、25本目「No Time to Die] はCovid19禍で2020年11月に公開延期となり、9月時点ではまだ24本です。

*6:前振りが長くてゴメンなさい。そういう筆性なんです。😓

*7:これ昭和語ですか?PCを閉めると言った方が良いかな😀