日本パブリック・リレーションズ協会はPR (Public Relations) を以下のように
説明しています。
組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である。19世紀末から20世紀にかけてアメリカで発展し、日本には第二次世界大戦後の1946年以降にアメリカから導入された。
企業・官公庁・団体他、あらゆる組織の運営に欠くことのできない考え方といえる。
協会の説明の続き。
パブリック・リレーションズについて、アメリカで教科書として定評がある「体系パブリック・リレーションズ」では、次のように定義されている。
「パブリック・リレーションズとは、組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能である。
サンドウィッチマンじゃないけど…ちょっと何言ってるかわかんない。☺️
KISS*1の原則、起動!
つまり、会社や団体組織が皆んなに良く理解して貰おうってことで色々やる事…ってことですかね。簡単に言うと。
マーケターがよくPR、PRっていうのは、これとは別に製品・サービスのパブリシティのことでしょう。新製品やイベントのプレスへの発表資料配布や、宣材配布、宣伝起用タレントのインタビュー手配、記者発表...etc、担当マーケティング部員のパブリシティ作業の裾野は広く、新製品が重なったりすると、寝る暇も無くなるほどでしょう。パブリシティ鬱ってのもありそうです。
其の21でご紹介しましたが、アメリカの著名なブランド戦略家親子のアル・ライズさんと、娘ローラ・ライズさんの書いた Immutable Laws of Branding(ブランディング22の法則)*2でパブリシティの効果について以下のように書いています。
“マクドナルドやコカコーラのような大型ブランドを維持するには、多額の広告予算が必要であるかもしれないが、一般に広告が新しいブランドを離陸させることはない。
アニタ・ロディック*3は広告をまったく使わないでザ・ボディショップを巨大ブランドに築き上げた。彼女は代わりにパブリシティの機会を求めて精力的に世界を旅し、環境に関する自分のアイディアを売り込んだ。
スターバックスも広告には大金を使っていない。同社が10年間の広告費用は1千万ドル*4足らずであり、年間売上が10億ドル*5近いブランドにすれば取るに足りない金額である。”
まぁ広告が最初ブランディングに寄与する事はほとんどない、という親子の論には私は異論がありますが、それはさておき、起業間もない会社が十分な広告費を確保できないというのは明白でしょう。パブリシティに注力するしか手はないわけです。
その際にしなければならないことがあります。
1) メディアが取り上げたくなる
2) ブランディングの方向性に合致した
3) 掲載時の出目 (出稿量、扱われ方) を計算した
4) 事実としてのプロモーション活動を設計、実施
4) に書いたように、嘘であってはなりません。盛ってもいけません。トランプ大統領じゃありませんが、it's fake newsになって、信用性を一夜にして失ってしまいます。一度失った信用を取り返すのは至難の技です。
最近の人は、InstagramなどのSNSで日常的に「映えるように盛ること」をしてますから、企業の「盛る」行為には敏感です。
次回に渡っていくつか好例を上げたいと思います。
まずは数年前に岡山県倉敷中央病院が外科研修医選考試験で実施した適正判断試験です。
高い評判の総合病院ですが、外科医の実績や評価も優れているこの病院のレピュテーション向上に繋がったパブリシティと確信します。
まずは、どんな活動だったか、YouTubeから。
如何でしたか?
ビデオはプロの手で編集されていますが、このトライアウト(適正判断試験) は事実ですし、トライアウトを経験した研修生数人がインタビューに答えていますからCredibilityが高いですね。
なにより、トライアウトの試験内容がユニークです。
3つの試験が用意されています
1) 5ミリの極小折り鶴をピンセットで折る
2) バラバラにされた昆虫をピンセットと瞬間接着剤で元の形に戻す
3) コメ粒大の寿司セットをメスとピンセットで作る
制限時間はそれぞれ全て15分です。
物理的な手術を行うことが「商売」☺️の外科医には手先の器用さが必須なのは周知のことです。
不器用な外科医って聞いたことないですよね? いたとしても淘汰されちゃいますよね。
残っていたらそれこそ問題です。ブラックジャックじゃありませんが、「神の手外科医」が
メディアで多く取り上げられている今です。手術には準神の手でもいいからお願いしたい。
そんな現代、この気の遠くなるような手先の器用さが求められるトライアウトを経て
やっと研修医になる、この倉敷中央病院の外科医の技術はかなり高いに違いない・・・と
連想しません?
倉敷中央病院外科のレピュテーションをより向上させることに、このパブリシティは寄与したはずです。病院は地域性の高いものなので、拡散露出は全国レベルではなかったでしょうが、上述の4つの効果的なパブリシティ必要事項を満たしています。
特に大事なことは、メディアが取り上げたくなるビジュアルであることです。外科医の技術力を専門用語を駆使して、枚挙にいとまがないくらいに書類にまとめても、これっぽっちもアタマに入ってきませんが、たった一本のVTRを見ただけで、腹落ちします。
コメ粒大の寿司をメスとピンセットで作った器用さ、WOW! って思いません? これって、メディアの食指を動かす最大のポイントです。ビジュアル。すぐわかる。Lateral Thinking!
続きは次回に。同じやり口で、同じ時期に、全国的なパブリシティを毎年行なって成果を
上げている会社の好例について書きたいと思います。