先週は聴覚的なブランド・ソーマの代表例としてBraunシェーバーのモーニング・レポートCMシリーズを上げました。レポーターが実際に取材した通行人ビジネスマンの髭の剃り残しを、ヘッド部を取り白い板の上に「トントン」とやって落す・・・というプロットです。
「他社製品では剃り残した髭もブラウン・シェーバーはよく剃れるので根こそぎ処理できるんです。」というのが訴求ポイントの実によく出来た実証型コマーシャルです。後によく言われるようになるU.S.P.訴求です。Unique Selling Propositionというやつです。敢えて訳すと独自の差別化ポイント・提案。加えて、こんなことを言う人はいないかもれませんが、あの「トントン」音が実は強力なブランド想起を惹起するブランド・ソーマになっていると書きました。
聴覚ブランド・ソーマとして、あのネスカフェ・ゴールドブレンドの「ダバダ〜」スキャットに並ぶ強いものではないでしょうか?
とは言え、この二つのシリーズは余りに古い話なので、今回は直近で私がこれはと思ったブランド・ソーマの話をしたいと思います。
ご存知のライザップです。RIZAPと書かないと怒られるかな。😁
RIZAPと聞いた瞬間に、あの
「ブー、ブッ。ブー、ブッ」
「チャラーンラ、ラランラ、チャラーンラ、ラランラ」*1というBGMが頭の中に鳴り響きませんか?😁
この5、6年間、私の好きな元ボクサーの俳優である赤井英和をはじめ、浅香唯、天野ひろゆき、エドはるみ、森永卓郎・・・枚挙にいとまがないくらいに次々と芸能人たちがCMに登場しました。実際に2ヶ月にわたるRIZAPのトレーニングとダイエットメニューに取り組んだ結果ですから、実に説得力のある、いわゆる実証型C Mの典型ですよね。
では赤井さん編を。
あのCM、贅肉がついてゆるんだカラダと、RIZAPトレーニング&ダイエット後に仕上がったシェイプアップされたカラダの、ビフォア&アフターをあの特徴的なBGMで見せているだけの実にシンプルな構造なんですね。しかもメッセージは「結果にコミットする」だけ。良くみると「2ヶ月でこのカラダ」「30日間全額返金保証」ともテロップが出てるけど覚えてるのは「結果にコミットする」だけ。😁
実にわかりやすい。トレーニングやダイエットのビフォー&アフターを見せるというのは定番なんですが、ここまでフォーマット化し、余計なことは一切言わず、映像インパクトで通すというのがお見事です。モデルは芸能人だけではなく、素人さんも多く起用されていて、まぁ良く皆この厳しいと言われる短期集中トレーニングとダイエットを耐えたもんだと感心します。
ただ単にマッチョになろうということなんかじゃなくて、このRIZAPトレーニングにはブランド価値、Emotional Benefitがちゃんとあると、わたしは見立てています。
それは「若き日の自分の姿を取り戻す」です。多くの日々を過ごして人生経験を積み重ねたのは良いけれど、余分な脂肪もつけてしまった自分・・・シャープだった若き日の自分を取り戻す・・・とてもaspirationalなEmotional Benfitです。好感します。
そしてそのブランドに対する好感を引き出すきっかけとなるブランド・ソーマ*2
が例の特徴的なBGM、ジングルと言ったほうが正確かな、そのものなんです。
コクリコ遠藤章造さん編は、まさにこの「若き日の自分の姿を取り戻す」Emotional Benefit訴求の典型です。私はこれはRIZAP CMシリーズの金字塔と思っています。
若き日の自分を取り戻す・・・
若い頃は皆、贅肉もなく、動きもシャープだった。
それが今やすっかり疲れてだらしのない体型に…なんとかしたい...これって殆どの中年の人に当てはまる潜在的願望じゃないでしょうか。
鍛え上げてマッチョ、筋肉マン・ウーマンというのではなくて、以前のわたしにちょいと筋肉も、
みたいな。
RIZAPのコースは決して安くはありません。週二回のトレーニングと糖質コントロール・ダイエットの個別指導プログラムの提供で、基本コースが34万8,000円とHome Pageにあります。
それでも「シャープだった昔の自分を取り戻す」というEmotional Benefit、つまりブランド価値は強いんですね。年収の高い層であればあるほど、仕事に時間を取られて、ステイタスと同時に贅肉も身に付けているのではないでしょうか?😁 34万8千円掛かっても、why not? なのでしょう。
コミットって、本来は責任を持って約束するという意味で英語的にはとても強い言葉です。コミット、コミットメント...日産のカルロス・ゴーン元会長が使って有名になっった言葉ですね*3。
「結果にコミットする」というのは大変強いメッセージです。つまり失敗する可能性も高いダイエットプログラムが多い中、必ず結果を出しますよと言い切っているわけです。
Rizapが「結果にコミットする」と言い切っていることは、減量シェイプアップに失敗した人、リバウンドした人は自分が厳しいトレーニングにコミットできなかったのね、という自己責任感を示唆しています。これもなかなか秀逸なメッセージの作り方です。そこまでRizap側が意識しているかどうかは分かりませんが。
ところで、減量シェイプアップ・トレーニングのライン・エクステンション*4で、RizapはRizap GolfとRizap Englishを出しました。
両方とも、先述したRizap減量シェイプアップ・トレーニングで訴求している「若い頃の自分を取り戻す」というようなEmotional Benefitはありません。
ゴルフは「80台を出していた昔の自分を取り戻す」ではありませんし、英会話は「昔英語がベラベラだった自分を取り戻す」わけじゃありません。😁
出来ないところからがスタートで、これって言ってみれば普通です。もちろん、ゴルフは例えば100を切るとか、英語ならばTOEICを200点以上アップする*5というようなプロミス的なメッセージはあります。
ホームページを見ると、Rizapゴルフもイングリッシュも基本コース2ヶ月で50万近くはするので、余裕のある方でないと無理ですね。Emotional Benefit、つまりブランド価値がないと、本体のRizap 減量トレーニングのような成功には覚束ないと思うんですけど、どうなんでしょうか。推移をウォッチしたいと思います。