Copy Strategy って言葉聞いたことあります?
欧米系企業を長く担当してきた広告人だったので、この言葉は嫌ってほど聞きました。
広告提案をする時のいわば一丁目一番地なんです。
広告クリエイティブの制作はこれから始める。
広告を作る際の設計基本マニュアルと言えば分かりやすいかもしれませんね。
日本の広告人、企業の広告担当にCopy Strategyといっても、ピンと来る人はほとんどいないでしょうけど、カンヌ広告祭に行って海外の広告人を取っ捕まえて、Copy Strategyって言葉知ってる?と聞いたら「あなたは私をからかってるのか?」と怒られるでしょう。それほどあちらでは当たり前の広告用語です。
Copyは広告表現と訳すといいと思います。広告表現戦略。
MarkeringStat.com という海外サイトに以下のような説明が書いてあり、簡潔にして要を得ているので以下引用します。
What is the copy strategy?
The Copy Strategy determines what to tell the customer about your brand, so to win their preference....(以下日本語訳にしました)
コピーストラテジーって何でしょうか?(以下CSに略)
CSは顧客にブランドのどんなところを伝えれば、好感してもらえるかを策定したものです。
CSは三種類の要素から成り立ちます。
Benefit(便益) またはPromise(約束) : 例えば、洗剤BrandXは他の競合ブランドのどれより洗濯物をきれいに、白くします。
Support (裏付け) またはReason (主張する理由) :ブランドが」約束する便益をもたらす理由はなにか。具体的なデータに紐づけるケースが多い)
Tone: ブランドがどのような情趣に受け取られて欲しいか。例えば、現代的で先進的。
というわけです。企業によってCopy Strategyは差があり、違う要素が加わることがほとんどですが、この3大要素は鉄板です。つまりここを押さえておけば、外れることはないんです。
「外れることはない」というのは、広告をつくる際に企業側社内の関係者の的外れ、広告代理店側の暴走などを回避することができるという意味です。☺️
こういった「ハズレ」って実際ホントに多いんです。広告をつくったことがある人ならば絶対わかる。広告代理店側だった自分は過去何回も脱線暴走したことがあります。その時の対象商品にはCopy Strategyは無かったんです。無いことをいいことに・・・😁
なぜこのCopy Strategyの話を持ち出したのか。以前 Brandingの要点は、Consistency とContinuityであると書きました。
一貫性と継続性。これを担保するためには明確なPis itioning StatementとCopy Strategyが不可欠です。って偉そうにいってますが、30年間にわたり欧米系企業の「外人」幹部たちのブランディング虎の穴😂道場で叩き込まれたんです。
Positioning Statement、なんかまた聞き慣れない言葉が出てきましたよね。これはポジショニング概念を明文化したものです。
企業マーケティング部長
「君ぃ、こんな広告の提案なんかしてきて、大事な我が社の製品のポジショニングが全然わかってないね!」
広告代理店担当
「申し訳ございません。わかってませんでした・・・。ところで、そのポジショニングを念のためもう一度教えていただけますか? お手数ですが。」
マーケティング部長
「そんなもの自分で考えなさいよ!それが仕事でしょ!」
(広告代理店担当が帰ったのち)
部員を急かす部長
「あの製品のポジショニングの書いてある資料、ちょっと用意しておいてよ。」
部員
「そういったものはないんですけど・・・」
部長
「え!ないの?」
部員
「特に必要がなかったんで・・・代理店に言ってすぐ作らしときます!」
なんかいかにもありそうな会話を妄想してみました。☺️
ポジショニング概念を明文化してPositioning Statementsを作る・・・
これって企業のマーケティング部の仕事です。広告代理店が作るような性質のもんではありません。部長、違いますよ!😀
元日本マーケティング学会会長で中央大学ビジネススクールの田中洋教授は大著「ブランド戦略論」*1でポジショニング概念についてこのように書いています。
ポジショニングとはどのようなものか。ポジショニング概念を最初に唱えたRies&Trout(1994)は「マーケティングとは商品の戦いではない。知覚の戦いである」といい、さらに「マーケティングにおける最も強力なコンセプトは、見込み客の心の中にただ1つの言葉を植え付けることである」と述べている。ライズとトラウトはこのような「強力な」言葉の事例として、ボルボ=安全性、メルセデス=技術、ペプシコーラ=若者、などを挙げている。つまりより簡単で、競合と差異性のあるポジショニングをメッセージによって伝えることがポジショニングを成功に導く早道であることになる。
Positioning Statementって大きなテーマなので、ここでは深掘りはせず、本稿のCopy Strategyに話を戻します。要はPositioning Statementが先ずあって、それを念頭に広告を制作するためのCopy Strategyを用意するということです。
広告を作る際には「こんな広告をつくってね」というブリーフィングを企業から広告代理店にするわけですが、妄想会話に出てきた😁部長さんじゃないですけど、広告制作方針書と言ってよいCopy Strategyが存在しない、ってことは実はよくあります。
日本企業ではブリーフィング書類はあっても、広告制作の指針に特化したCopy Strategyがあることの方が珍しいかもしれない。いや、そうに違いない。😀
ブランディング重視のConsumer Products メーカーの多国籍企業では逆にほとんどあると言って間違いないでしょう。
先述した3種の神器😁である Benefit (Promise)、Support (Reason)、Toneに加えて、よくあるのはWhat to sayに How to sayという項目。何を伝えるのか、どのように伝えるのかの項目です。
この項目は広告表現に直結している重要なパートなんです。
What to say, これはちゃんと絞り込まれていなきゃダメです。あれもこれもはだめ。
前出の田中洋教授が「ブランド戦略論」の中で書いたように、米国のマーケティング学者ライズとトラウトはペプシコーラがブランドのポジショニングを一言で「若者」に代表させたと見立てましたが、ペプシコーラのCopy StrategyにはWhat to sayの項に「Pepsi cola is the choice of the new generation」と書いてあったと思います。余計なことを四の五の言わない。😁 どうせ人はいくつものメッセージなんか覚えられないんだから。
こうした広告の設計指針を示したCopy Strategyがあれば、妄想会話の部長さんと広告代理店のようなすれ違いをミニマムにして効率を高めることが可能になります。
もちろんこのCopy Strategyもクライアント側、つまり企業側が用意する性質*2のものです。
複数の広告代理店を使い分けることが多い日本企業こそ、このCopy Strategyは持つべきです。各代理店からの提案を同じ土台に乗せることができますから。
よく出来たCopy Strategyというのは、A4一枚のシートにまとまっています。二枚までは許しましょう。😁
実際につくってみると、多くの要素を考慮した挙句、断捨離に断捨離を重ねないとシンプルなものに辿りつかないということがわかります。シンプルで無いとダメなんです。人によって解釈が変わってしまわないように。クリエイティブ・バイブルなんですから。
マーケターの方、試しに私につくらしてみませんか? Copy Strategyのゴーストライター経験豊富なんです。😁