必ずブランディング通になれる3分で読めるエッセイ〜ブランドのチカラ

ブランディング・コンサルタントの経験譚。Barで若きマーケーターとスコッチ飲んで話す気分で。ブランディング & マーケティング・コミュニケーションのあれやこれやを分かりやすく、自分の言葉で。

其の47 ブランドを語った偉人たち〜梶 祐輔 ②〜

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「広告の迷走」梶 祐輔 著 (宣伝会議 2004年発売)
<共有価値の創造・・・このことが「広告」*1の真髄だと直感していた梶さんは、商品名を連呼する、たった15秒のTVCMにメッセージを詰め込む当時の状況に嘆き、憤怒を著書に認めました。それは次回に...というところで前稿は終えました。

本稿はその梶さんの「憤怒」に接近したいと思います。名著「広告の迷走」での氏の辛辣っぷり、凄いんです。

最前線にいた広告人の現役時代を振り返ると、耳が痛いです。ちぎれて大出血です。😂

梶さんの生声、生筆?をぜひご紹介したいので、要約しますが引用が長くなることご容赦ください。

第一章 「商品を売るのが広告」という偏見と誤解
「広告とは何か?」という問いかけに、広告に専門家や関係者は、おそらく100人が100人「商品を売るためのコミュニケーション活動」と答えるはず。

広告主は僕たちに「商品が売れる広告を作ってくださいよ」と念を押す。その前提には「広告は商品を売るためにある」という固定観念がある。

それがこに国の、広告に関する憲法であった。

突飛なことを言うようだが、その憲法が間違いだったら、どうなるのか。

広告は英語で言うと、アドバタイジングとプロモーションの双方を含有している。
この両者の「国境線」は日本では実はあいまいに放置されてきた。

普通の会社の場合、マス媒体の購入をするので、アドバタイジングはプロモーションよりはるかに大きなお金が動く。

したがって本来プロモーションの役割であった「商品を売ること」がアドバタイジングの責任として重くのしかかってくることになった。

ぼくは「広告 (アドバタイジング) とはなにか?」と問いたい。

広告は商品を売らない。広告は消費者やステークホルダーとの「信頼関係をつくるもの」なのである。一歩進めて言えば、広告は「長期にわたって商品が売れ続けるために、絶対不可欠な信頼関係をつくるもの」だ。


としたうえで、氏は両者の役割を以下のように箇条書きしています。

アドバタイジング
長期にわたって商品が売れ続けるために絶対不可欠な信頼関係をつくるコミュニケーション活動
目的: マインド・シェアを高めること、ブランドを維持することなど
期間: 長期間 (何年間にもわたって継続展開される)
所管: 社長室、経営企画室
アドバタイジング費用の性格: 経営コスト、投資

プロモーション
目先の商品を売り切るための各種の販売促進活動
目的: マーケット・シェアを高めること、販売目標を達成すること、など。
期間: 短期的 (販売目標達成のために期間限定で展開される)
所轄: 営業または販売部門
プロモーション費用の性格: 営業経費


こう語り、氏は広告の役割を「いい土をつくる」ことと、農業に例えています。

プロモーションは化学肥料。化学肥料はたしかに即効性があり植物の成長を助けるが、土地は確実に痩せていく。やがては収穫量が落ちる。じっくりと長期にかけて自然肥料で育てること(アドバタイジング)と化学肥料(プロモーション)を並走させる必要があるのだと言っています。

さぁ、ここから始まりますよ、氏の辛辣トーク

しかし、この国の広告の世界は、いい土をつくることを軽視してきた。

新製品を次々と連発投入するこの国のメーカーのことを、市川和彦( P&Gに在籍したブランド・マーケター) はそれを「多産多死型のマーケティング」と名付けている。

世界の基準からみて我が国の商品のライフサイクルは極端に短く、新製品も半年か一年の寿命と考えられている。

だからこの国ではもっぱら半年で完結するキャンペーン、三ヶ月か半年でペイする広告が発達した・・・広告は目先の「商品を売る」ことのみに狂奔してきた。

そのことの愚を広告関係者も、学者も、専門家も誰一人として考えなかった。

広告制作者たちは、おかげで商品がよく売れたよ、という言葉を最高の褒め言葉と受け取るようになった。

「商品が売れた」という刹那的達成感、これが長期的思考をスポイルする習慣性の強い麻薬のような曲者だった。この国の広告は、こうして5年先、10年先を視野に入れる姿勢を失っていった。


氏の辛辣極まりない指摘を書いているうちに、自分が責められているような思いで、気持ちが萎えてきました。以降は次稿に譲ります。なにか精のつくものでも食べて、再びリングに戻ります⋯

*1:梶さんの言う”広告”は”ブランディング”のことであったと確信します。