必ずブランディング通になれる3分で読めるエッセイ〜ブランドのチカラ

ブランディング・コンサルタントの経験譚。Barで若きマーケーターとスコッチ飲んで話す気分で。ブランディング & マーケティング・コミュニケーションのあれやこれやを分かりやすく、自分の言葉で。

其の41 TOYOTA Purius のブランド考察

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TOYOTA ホームページより

 

  メルセデスベンツの例を引用するばかりじゃなくて、国産車のブランドについて今回は書きたいと思います。

 

  と言っても、私はお恥ずかしながら機械音痴、メカ音痴。小学生の頃には零戦の模型すらまともに組み立てられず投げ出したくらいです。

 

  長じて結婚後に初めて自分で所有した車が日産の真っ赤なブルーバードSSS。義理の叔父が譲ってくれた名車(多分)です。5年ほど乗っていましたが、一度もボンネットを開けたことがなかった。

 

  結婚して35年、この日産ブルーバードを含めて国産車3台、外車4台を乗り継いできましたが、ボンネットを開けたことが一度もないんです。

 

  つまり自分の車のエンジンを見たことが一度もないんです。

 

  というわけで、メカとしての車には超疎い私ですが、書いたように35年で7台、一台平均5年のローテーションで新車を購入してきたんだから立派に車の消費者です。ブランドを語る権利はある!☺️

 

  さて、そんな私の心に楔を打ち込んでいる日本の車が2種あります。私の頭の中に確固たるイメージがあるので、これまさしく『ブランド』です。

 

  それはトヨタプリウスLexusです。

 

  まずプリウス

 

  1997年に初代モデルが発売されて以来、エコカー(こんな言い方は雑駁ですが)の代名詞となったプリウス

  最近は電気自動車が隆盛で、EV、PHVやら水素燃料車やら百花繚乱の様子ですが、それぞれのプロコンはメカ音痴のわたしにはさっぱりです。

 

  なので、雑駁に「エコカー」と言いますね。

 

  エコカープリウスは、実は外車を買う際に常にセカンドオプションとして胸に秘めてました。

 

  燃費がいいとかそういう経済性の問題ではなくて。なぜだか気になっていたんです。ずーっとです。

  自分の車を2台持てたならきっととっくに買っていたでしょう。

 

  妻も車を足として使って仕事をしているので、燃費の線で説得して、自車として買わせようと企みましたが、ダメでした。エコ志向がないんですね。まったく。

 

  さて、プリウスが何故か気になっていたわけですが、ある時に「そういうことか!」と腹落ちしたんです。

 

  盟友のマーケター氏とランチしながら打ち合わせをしていた時でした。

 

  お互い今乗っている車の話になった時に、彼が愛用しているプリウスの話をし始めました。

 

  曰く自分は以前は走り屋で、次から次へと車を変えたものだけど、プリウスに乗るようになってから随分心持ちが変わってね、追い越されてもカッとしたり、鈍い車を煽ったりしなくなった。

  お先にどうぞスピリッツというか。そんなに焦ってどこへ行く的な心の余裕というか。。。

  やっぱりエコロジーマインドで乗っているわけなんで。自然とそうなるよね。エコマインドのある人間が煽ったりしちゃダメでしょ。

 

・・・なるほど。膝を打ちました。

 

  自分が長い事プリウスという車が気になっていた理由がわかりました。

 

  自分はどこかでエコマインドのある人間に憧れがあったんですね。

 

  神田の生まれ育ち、つまり江戸っ子なんで短気なことには自信があります。😁

  反面、車に乗る時くらいはイライラせず、気持ち穏やかに過ごしたいという潜在的な反動意識がどこかにあったんですね。

 

  マズロー*1とマレー*2が共通して指摘している人間の持つ「承認欲求」が自分のこの気持ちの背後にあると思います。

 

  やはり、どこかで「意識高い」系だと思われたいという邪心が私の心のどこかに潜んでいるのでしょう。

 

  つまりPriusのEmotional Valueは、小池百合子都知事風に言うと☺️ Wise Spending、自分はエコもちゃんと意識してるWise Spenderであるという自己満足感であり、本能的な欲求は「それを認めてね」という承認欲求だと思います。

 

  私が今乗っている車はメルセデス・ベンツです。脚が悪いので(運転には問題はないんです。)室内高が高く、安全機能もてんこ盛りなB Classに乗ってるんですが、心のどこかにマレーの欲求リストで言うと「優越欲求」があるんだと思います。だから他のベンツオーナーに「B Class? あー、なんちゃってベンツみたいな。」と言われて凹むんですね。☺️ 

 

  メルセデスに感じるオーナーの優越感、一方でプリウスに惹かれる「エコマインドフルな私」をいいね!と言って欲しい承認欲求。どっちなんだよ!と言われそうですが、人の志向嗜好はもともと不合理なんですから。☺️

 

  ダイアモンド誌が2019年にブランド研究の泰斗、デビッド・アーカー名誉教授(カリフォルニア大学ビジネススクール)にインタビューした際、氏のプリウスの成功に関しての次のような発言を紹介しています。

世界初のハイブリッド車として登場したプリウスは、「地球温暖化問題に取り組む」という高次の目標を顧客、社会と共有しました。そして実際に、環境にやさしく、優れた技術を持った製品でした。

プリウスを運転していると、それを見た近所の人や友人が「あの人はハイブリッド車に乗っている」と気付きます。つまり購買者はプリウスに乗ることで、「地球温暖化に関心を持ち、実際にその防止に貢献している」という姿勢を周囲にアピールすることができる。

 

  ほらね。☺️ アーカーさんも言っています。下線の部分、簡単に言えば「(エコ)意識高い系」に思われたい承認欲求ですよね、つまり。

 

  室内高の高いプリウスが出たら、買うんだけどな。(妻の同意が絶対条件ですが。☺️)

  あ、それかLexus。私の中で Lexusメルセデスとブランドイメージが違うんです。メルセデスに感じる「優越欲求」。Lexusに感じる欲求はそうじゃない。

 

  その話は次回に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:エイブラハム・マズローアメリカの心理学者。欲求5段階説で有名。

*2:ヘンリー・マレー。アメリカの心理学者。39種類に及ぶ人間の欲求リストを作成した