前稿で、日本の広告をダメにしたのは制約のある15秒TVCMという形態と、
其の短い秒数でインパクトを最大限にする為にほとんどのTVCMがタレント依存型の
ものになってしまった、とする氏の批判を紹介しました。
タレントCM*1の何が悪いと氏は言っているのか。
最大の問題点として氏が指摘するのは、商品ではなくタレントが中心になってしまう事。
そして、タレント契約が終了すると、往々にしてタレント効果で商品を買っていた消費者がタレントとともに去ってしまう、と氏は力説しています。
以下要約引用します。
大物タレントを起用したコマーシャルでは、商品に関わる情報が必要以上に二の次になり片隅に押しやられてしまう傾向が強い。
有名タレントのなかにはイメージの固定化を恐れて同一スポンサーと長期間契約をする
事を好まない輩(原文ママ(・・;))も多い。広告主の側にもタレントは使い捨て(原文ママ😭)
という意識が強い。人気が落ちればたちまち切ってしまう。(アイドルタレントを次々と変える)
「タレント・サーフィン」を繰り返している企業はいったい何を考えているのだろう。・・・それでもタレントCMが減らないのは、それで商品が売れることがあるからである。
タレントの力であることは認めなければならない。しかし、視聴者が購買を決めるモチベーションは「あのタレントが出ていたCMの、あの商品が欲しい」ということに
尽きるのである。其の時視聴者は、商品の効用・利便・特長を理解しているわけではない。商品名、
会社の名前すら覚えてないことがある。それでも「あのタレントの、あの商品」は
売れることがある。そういう意味では、タレントは頼りになるセールスパワーである
といえよう。だが、そういう売れ方を、僕らはほんとうに歓迎すべきなのか。
歓迎すべきかどうかは置いておいて、企業の立場で言えば、タレントが頼りになる
セールスパワーになるのであれば、とても有力な選択肢の一つなんです。
梶さんの辛辣な指摘はもっともであります。でも、スーパー、コンビニで売られる消費財の例で言うならば、実際に市場には競合商品があふれてい、流通は分かりやすい商品支援プロモーションを品揃えに加える条件として求めてくる。そんな状況下、短期間でオフテイクを上げなければ、ひと月で棚落ちです。コンビニに至っては、本部で全国の週販をオンラインで管理追跡していますから、
売上がたたない新製品は数週間のイノチなんです。
背に腹は変えられない、ってことなんですね。😂
中長期視点では、ブランディングをしていかないと長生きするブランドはつくれない。その通り!
でも、長生きを考えるまえに、今日明日、来週、今月を生き抜かないと、長生きする前に死んじゃうんです。ほとんどの企業は、今を生き抜くことに全集中なんですよね、実際は。
ここはアタマが痛いところです。中長期の視点が大事なのはよく分かる。でも明日を生き抜かないと、未来がない。
某食品外資系企業のフランス人男性マネジメントが昔私に繰り返し言いました。
「有名タレント(彼らはcelebrity と言ってました) を広告に使うのは二つの大きなリスクが伴う事を十分承知しておく必要がある。ひとつは、タレントの人気のボラティリティ(上昇下落)やスキャンダルが商品の売り上げに影響を与えること、そしてそれは我々のコントロールできるものではない事。
そして、もう一つ。Vampire Effectだ。」
Vampire Effect・・・直訳すると吸血鬼。。。
なんかマーケティングの話にそぐわない怖い感じですね。
要するに、こういうことなんです。
有名タレントは、吸血鬼が血を吸うように、消費者の注目という栄養分を自分に引きつけてしまう。
商品にではなく・・・
当時、広告会社で缶コーヒーのマーケティングを担当していて、常に人気ランキング上位にいるタレントさんをCMで使っていたので、マネジメント氏から折りに触れて、そのVampire Effectの話を忠告として聞いていたんです。氏はブランディングの信奉者でしたから、この辺りは嫌ってほどご指導を受けました。(当時はホントに嫌になりましたけど。😂) それもあって、その缶コーヒーのCMはいわゆるタレントCMの皮を被ったブランディングCMに設計しました。その話はまたいずれしたいと思います。
次稿では、「15秒TVCM犯人説😂」を唱えた梶さんが認めた2本の15秒TVCMについて書きます。